固定電話の番号ポータビリティができない理由とは? おすすめの乗り換え方法も解説

携帯電話だけでなく固定電話も、番号ポータビリティが利用できます。番号ポータビリティとは、電話番号を変更することなく、電話会社を変更するサービスです。例えば、別の電話会社に希望のサービスがある場合、電話会社を変更したいこともあるでしょう。その際、電話番号を変えずに電話会社を変更し、サービスが利用できます。
しかし、利用している電話会社や電話番号によっては、番号ポータビリティが利用できないケースがあります。これを事前に確認しておかないと、実際に番号切替を行う際に番号ポータビリティができないことに気づき、最悪番号がなくなり電話による通信ができなくなるというケースも起こりえます。
本記事では、固定電話の番号ポータビリティができない理由4つについて詳しく解説します。番号ポータビリティを実施しようとして失敗しないためにも、ぜひご一読ください。
番号ポータビリティが利用できない理由①:050番号ではじまるIP電話は対象外

番号ポータビリティができない理由の1つ目として上げられるのは、050で始まるIP電話番号を使用していることです。050で始まるIP電話番号は、番号ポータビリティが利用できません(注1)。これは、050番号がIP電話専用の番号として総務省によって割り当てられており、従来の地理的制約に縛られない特殊な番号体系となっているためです。また、IP電話はインターネットを利用した通信方式であり、従来の電話回線とは異なる仕組みを持っていることも要因です。
ポータビリティ制度の目的は、利用者が地域に縛られた電話番号を、引越しや事業者変更時にも継続利用できるようにすることにあります。しかし、IP電話はそもそも地理的概念を持ちません。そのため、050番号ではじまるIP電話では、事業者を変えた場合、新しい番号の取得が必要です。
尚、クラウドPBXを活用する場合、特別な条件やサービスによっては050番号をポータビリティで引き継ぎできる可能性もゼロではありません。同じ050番号の継続が最優先事項であるという場合には、念のためクラウドPBXのベンダーへ問い合わせしてみるとよいでしょう。
番号ポータビリティが利用できない理由②:同一事業者での移行は不可

番号ポータビリティが利用できない理由の2つ目は、同一事業者内での番号移行ができないことです(注2)。たとえば、同じNTT東日本・西日本の固定電話サービス内での移転は、番号ポータビリティではなく、事業者内での移転手続きとなります。
もともと番号ポータビリティ制度は、異なる通信事業者間の乗り換えを支援するために導入された仕組みです。そのため、同一事業者内でのサービス変更や回線種別の移行は、番号ポータビリティの対象にはなりません。
同一事業者内での手続きであれば、その事業者内で完結する処理となるため、わざわざ複雑な番号ポータビリティを利用せずとも、独自の手続きで番号を維持することが可能です。事前に事業者に確認するとよいでしょう。
もし同一事業者内の手続きでも電話番号が変わってしまい、どうしても番号ポータビリティを実施したい場合は、一度番号ポータビリティが可能な別の通信事業者に移転後、再度元の通信事業者に戻る、という方法もあります。この場合は双方向の番号ポータビリティとなるため、双方向の番号ポータビリティが可能かどうかを確認しておきましょう。
番号ポータビリティが利用できない理由③:番号が対象区画の範囲外

番号ポータビリティを利用しようにも、利用している番号が対象区画外であれば、利用することができません。固定電話番号には、例えば東京なら03、大阪なら06といった「市外局番」という地域に紐づいた番号体系を持ちます。この地理的紐づけは、通信網の効率的な管理や緊急通報の適切な処理のための重要な仕組みとなっています。これにより、番号ポータビリティは基本的に総務省が地域で割り当てている番号区画内でのみ可能です。
もし引越しなどで対象区画外に移動する場合、元の市外局番を持つ番号は新たな地域では使用できず、新しい地域の番号へと変更せざるを得ません。たとえ同一事業者であっても番号を引き継ぐことはできません。
番号ポータビリティが利用できないケース(INS回線やアナログ回線のサービス終息によるもの)

ここまでご紹介した「IP電話の場合」「同一事業者の場合」「対象区画範囲外の場合
というケース以外でも、固定電話の番号ポータビリティができないケースがあります。
NTT東日本では報道資料「双方向番号ポータビリティの開始について」の中の注意事項で、以下のようなケースで番号ポータビリティができない場合がある旨を伝えています。
『ひかり電話ならびに他事業者の固定電話サービス・IP電話サービスで払い出された番号を加入電話・INSネットに番号ポータビリティすることや、臨時契約の電話サービスの番号を他サービスに番号ポータビリティすることはできません。その他、技術的制約等によっても番号ポータビリティができない場合があります。詳しくは番号ポータビリティのお問い合わせ時やお申し込み時にご確認ください。』
(引用元:NTT東日本「双方向番号ポータビリティの開始について」)
固定電話の番号ポータビリティの仕組み

固定電話の番号ポータビリティは、電気通信事業法に基づいて運用されています。事業者間で「番号ポータビリティデータベース」と呼ばれる中央データベースを通じて共通の手続きを行うことで、番号を維持したままサービス変更が可能です。具体的には、利用者が新しい事業者と契約する際に、移転先事業者にて番号ポータビリティの可否確認が行われます。その後、事業者間でのシステム移行が実施されたうえで、工事日程が調整され、回線切り替え工事が行われる流れです(注3)。
ただし、番号ポータビリティができないケースや、料金滞納などの理由で拒否されるケースもあるため、事前に条件を確認することが重要です。
固定電話の番号ポータビリティのメリット

固定電話の番号ポータビリティを利用することで、いくつかのメリットが得られます。ここではそのメリットについて解説します。
電話番号変更による連絡が不要
固定電話の番号ポータビリティの最も大きなメリットのひとつが、「電話番号変更による連絡が不要」という点です。(注4)一般的に電話番号が変わると、その周知が大変です。例えば、取引先への個別連絡、顧客へのDM送付、各種印刷物(名刺、パンフレット、封筒など)の再作成、ウェブサイトの更新があり、多大な労力とコストがかかります。
電話会社を変更する際に番号ポータビリティを利用すれば、取引先や顧客、友人・知人など多くの相手に新しい電話番号を通知する手間から解放されます。業務への影響を最小限に抑えることができ、個人利用者にとっても、親族や友人への連絡がスムーズに継続できるという安心感があります。
ニーズに合った電話会社のサービスを利用できる
番号ポータビリティを利用することで、番号を変えることなく、より魅力的なサービスを提供する電話会社に乗り換えられます。具体的なサービス例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 国際通話の通信料金が安いプラン
- インターネット接続と一体化したサービス
- 高品質な通話サービス
- クラウドPBXとの連携機能
これらのサービスは、事業者ごとに違いがあります。ポータビリティを活用すれば、現在のニーズに合った通信環境を柔軟に選択でき、コストの最適化や業務効率の向上につながります。特に、海外に事業所を持ち、国際通話が頻繁に発生する企業では、国際通話の通信料金が安いプランを利用できると、大きなコスト削減を実現できます。
オフィスの移転で電話番号を気にする必要がない
固定電話の番号ポータビリティのメリット3つ目は「オフィスの移転で電話番号を気にする必要がない」点です。これは、特に成長企業や事業展開を活発に行う企業にとって大きな意味を持ちます。
例えば、営業活動を積極的に行う企業や顧客対応が重要な業種では、電話番号の継続性は事業継続性に直結します。より良い立地や賃料のオフィスへの移転を電話番号の問題を気にせず検討できることで、経営判断の自由度が高まります。
また、災害時の一時避難や事業継続計画(BCP)の観点からも、同一市外局番内であれば臨時のオフィス移転ができることも重要です。主要な連絡先である電話番号を変更せずに済むため、緊急時対応の選択肢が広がります。このように、限定的ではあるものの、同一市外局番内での移転に関しては、番号ポータビリティが企業の立地戦略や事業継続性を支える重要な制度です。
ただし、市外局番をまたぐ移転の場合には、番号ポータビリティが利用できないため、準備段階で十分に考慮する必要があります。
固定電話の番号ポータビリティを利用するための手続き

固定電話の番号ポータビリティを活用すれば、電話番号を変えずに通信事業者を変更できますが、そのためには所定の手続きが必要です。具体的な流れは以下のとおりです(注5)。
- 変更先の電話会社へ申し込む
- 番号ポータビリティの可否を確認する
- 必要に応じて切替工事を実施する
変更先の電話会社へ申し込む
固定電話の番号ポータビリティを利用するには、最初に希望する移行先の通信事業者に申し込みを行います。申し込み方法は通信事業者によって異なりますが、一般的には店舗窓口、電話、またはオンラインでの受付が可能です。申し込みの際には、現在利用している電話番号をそのまま使用したい旨を明確に伝えることが重要です。これは、新しいサービスへの加入手続きと番号ポータビリティの申請を同時に行うためです。
申し込みには、現在の契約情報(契約者名義・電話番号・設置場所住所など)を準備しておきましょう。不一致があると手続きに遅延が生じる可能性があります。
事前に押さえておくべきこととして特に重要なのは、希望する切替日時の指定です。これは業務への影響を最小限にするため、休業日や業務終了後など、業務時間以外を選びたくなるところでしょう。しかし残念ながら、基本的にどの事業者も土日祝などは休みであるため、一般的な営業時間内のみ切替対応可となっています。
通常、切替工事自体は数時間もかかるものではなく、適切な対応をもって進めておけば、ほぼ回線断は発生しません。ただし万が一のことを考えておき、通常の営業日の中で、自社が一時的に回線を使えなくなっても影響が最小限となる日、および時間帯を検討しておきましょう。
変更先の電話会社に申し込んだ後は、基本的に新しい電話会社が現在の電話会社との間で必要な調整を行ってくれるため、利用者側で両社間の連絡をとりもつ必要などは基本的にありません。
番号ポータビリティの可否を確認する
次に、実際にその電話番号がポータビリティの対象であるかを確認します。可否確認には数日かかることもあるため、余裕を持ったスケジュールで対応しましょう。なお、「番号ポータビリティが利用できない理由」の項でも解説したとおり、以下の場合は番号ポータビリティを利用できません。
- 050番号で始まるIP電話
- 市外局番が変わるエリアをまたぐ移転
- 番号が移行先事業者の提供エリア外
- その他のケース(INS回線やアナログ回線のサービス終息などの理由)
変更先の事業者が番号ポータビリティの可否を調査し、問題がなければ手続きはそのまま進行します。
必要に応じて切替工事を実施する
ポータビリティの可否が確認された後、必要に応じて通信設備の切替工事が行われます。特に、アナログ回線から光回線やIP電話など、異なる通信方式への移行を伴う場合には、物理的な工事や機器の交換が必要になることがあります。一方、すでにIP電話を利用している場合や、同種のサービス間での移行の場合は、物理的な工事ではなく、ネットワーク上での切り替え作業のみで完了することもあります。
ただし最終的な切り替え自体は、事前に適切な手続きが進められていれば、回線断もなくほぼ即時に完了します。ただし万が一のことまで考えておき、工事中は一時的に電話が使えなくなることもあるという想定で、業務上の影響がある場合は事前に周知しておくとよいでしょう。特に顧客対応や営業活動に電話を多用する企業では、あらかじめ代替連絡手段を念のため確保しておくことをお勧めします。
すべての手続きが完了すれば、従来の番号を維持したまま新しい通信環境が利用可能となります。念のため、発信・着信のテストを行い、正常に通話できることを確認しておきましょう。万が一問題がある場合は、すぐに変更先の電話会社に連絡し、早急な対応を求めることが大切です。
固定電話の番号ポータビリティはクラウドPBXがおすすめ

番号ポータビリティは、通信事業者のさまざまなサービスを選択できるのが大きなメリットです。多くのサービスの中でも特におすすめなのが「クラウドPBX」です。クラウドPBXは多くの電話番号に対応しており、既存の電話番号をそのまま利用できる可能性が高いです。弊社が提供しているクラウドPBXサービス「LIPSE Cloud PBX」を解説します。
クラウドPBXサービス「LIPSE Cloud PBX」の解説
クラウドPBXは、従来オフィス内に設置される構内交換機をクラウドに設置し、インターネット経由で通信を行うサービスです。そのため、インターネットに通信できれば、複数拠点で交換機能を利用できます。例えば複数に拠点をもつ企業や、在宅ワークなど、場所問わず利用できるという点が大きなポイントです。
LIPSE Cloud PBXは、このクラウドPBXの仕組みを利用しつつ、業務に役立つ機能を豊富に備えています。通話の発信・受信はもちろん、自動音声応答システム(IVR)、会議通話、通話の録音機能などがあります。
クラウドPBXサービス「LIPSE Cloud PBX」で利用できる機能の内容や利用料金一覧などの詳しい情報は、以下の公式サイトで紹介していますので、こちらもあわせて御覧ください。
https://lipse.jp/lipse-cloudpbx/クラウドPBXを利用するメリット

クラウドPBXを利用すると、多くのメリットが得られます。その中でも利用者にとって嬉しいメリットとして以下の3つが挙げられます。
- 番号を変更せずに利用できる
- 初期コストを抑えられる
- ランニングコストが安い
サービスを決めるうえでの重要な判断基準といえるでしょう。(注6)詳しく解説します。
番号を変更せずに利用できる
クラウドPBXは、主要な電話番号のほとんどに対応しています。0120、0800、050などの電話番号も含めて、利用している番号をそのまま移行できるので、番号ポータビリティを活用できます。
初期コストを抑えられる
クラウドPBXは、拠点ごとに構内設備を設置する必要がありません。代わりに交換機能をクラウド上に設置し、インターネット経由で利用します。このため交換機および交換機の設置工事にかかるコストを抑えられます。
ランニングコストが安い
クラウドPBXはランニングコストを安く抑えられます。例えば、LIPSE Cloud PBXでは通話が秒課金であるため、通常の分課金と比べてコストを大幅に削減できます。また、スマートフォンに専用アプリを入れることで内線化することで、通話料を削減できます。
番号ポータビリティを利用するための条件を確認しよう
固定電話の番号ポータビリティを利用すると、番号を変更しないまま通信事業者を変更することができ、電話番号変更による通知が不要という大きなメリットが得られるほか、ニーズにあった通信事業者のサービスを利用できます。しかし、番号ポータビリティを利用できないケースがあることを覚えておくことが重要です。
本記事では、固定電話の番号ポータビリティが利用できない理由として、以下の4点を解説しました。
- 050番号ではじまるIP電話
- 同一事業者での移行
- 番号がエリア範囲外
- その他のケース
固定電話の番号ポータビリティの方法の1つとして、クラウドPBXの利用がおすすめです。クラウドPBXは多くの電話番号に対応しており、初期コスト、ランニングコストを抑えられるなど、多くのメリットが得られます。固定電話の番号ポータビリティを検討している人は、クラウドPBXの利用もあわせて検討してみてください。
参考文献・エビデンス
注1 報道資料“「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン(案)」に対する意見募集の結果及び「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」”. 総務省.2025-1-30.https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban06_02000127.html , (参照 2025-06-03).
注2,4 資料“番号ポータビリティの扱いについて”. 総務省総合通信基盤局.2016-7-28.https://www.soumu.go.jp/main_content/000433169.pdf , (参照 2025-06-03).
注3 “【2025年1月開始】双方向番号ポータビリティとは?いつから開始かわかりやすく解説”. Nojima.2025-1-13.https://www.nojima.co.jp/support/koneta/204147/ , (参照 2025-06-03).
注4 番号が変わらないこと」によるメリット
「現状維持バイアス(Status Quo Bias)」に該当します。
「人は、現状が続くことに安心感を持ち、それが変わることに心理的コストを感じる。番号が変わらないことは、顧客との関係を維持する要因となる」
カーネマン, D.『ファスト&スロー』早川書房, 2012, p.206
「番号変更なし」は顧客にとって明確な利得であることを示しています。
注5 テレワープ“番号ポータビリティLNPとは?仕組みや流れを解説!”. 株式会社フォレスタ.2025-5-30.https://telwarp.co.jp/lnp-telphone/#index_id12 , (参照 2025-06-03).
注6「初期・ランニングコストが安い」ことによるメリット
クラウドPBX導入のメリットとして、「初期コストが抑えられる」「ランニングコストが安い」が挙げられています。
これは、顧客側の「損失回避バイアス(Loss Aversion)」に応える仕組みを現しています。
「人は利益の増加よりも、損失の回避に強く反応する。費用がかからない・維持費が安いという情報は、選択行動において重要な判断基準となる」
カーネマン, D., & トヴェルスキー, A.『ファスト&スロー』早川書房, 2012, p.279
価格への不安を軽減する設計は、顧客の心理的障壁を取り除く合理的な要素だということを表現しています。