固定電話の番号ポータビリティとは？ 2025年1月開始の双方向番号ポータビリティについても解説

番号ポータビリティとは、電話会社を変更しても、電話番号はそのまま変更することなく、移行先の電話会社のサービスを利用できる制度のことです。携帯電話の番号ポータビリティは一般的となっていますが、固定電話も番号ポータビリティができることをご存じでしょうか。

本記事では、固定電話における番号ポータビリティについて詳しく解説します。また、2025年1月から双方向の番号ポータビリティも開始しましたので、あわせて紹介します。

固定電話の番号ポータビリティとは

最初に固定電話の番号ポータビリティとは具体的にどのようなものか、その概要をみてみましょう。

固定電話の番号ポータビリティの概要

固定電話の番号ポータビリティは、現在利用している固定電話の電話番号を変更せず、他のキャリア（通信事業者）に乗り換えできる制度です。

番号を変えずにキャリアを変更できることで、通信事業の競争が促進され、利用者の利便性向上が期待できます。ただし、すべてのエリアや番号が対象ではなく、利用には一定の条件や制約があります。

これまではNTT社から他のキャリアへの一方向の乗り換えのみ可能でしたが、2025年1月から双方向の乗り換えが可能となりました。

固定電話の番号ポータビリティが利用できるキャリア

固定電話の番号ポータビリティを利用できるキャリアは、総務省の指針に基づき、一定の条件を満たした企業に限られます。例えば、NTT東日本・西日本（加入電話 / INSネット）以外にも、KDDI（メタルプラス）、ソフトバンク（おとくライン）などが挙げられます。

他にも、クラウドPBXやIP電話事業者の一部でもLNP（ローカルナンバーポータビリティ / 固定電話番号を通信事業者間で引き継ぐ仕組み）に対応している場合があり、法人を中心に需要が高まっています。

固定電話の番号ポータビリティのメリット

固定電話の番号ポータビリティを利用することで、大きく3つのメリットが得られます。

• 連絡先の変更が不要
• クラウドPBXへの変更による通信コストの削減
• 利用者のニーズにあったサービスが選択できる

それぞれのメリットについて詳しく見ていきます。

連絡先の変更が不要

固定電話の番号ポータビリティの最大のメリットの一つは、契約先のキャリアを変更しても、これまで使用していた電話番号をそのまま利用できる点です。番号を変更すると、取引先や顧客へ連絡しなければいけません。番号ポータビリティを活用すれば、こうした手間やコスト、負担を回避でき、スムーズに移行できます。

クラウドPBXへの変更による通信コストの削減

固定電話の番号ポータビリティを利用することで、キャリアのサービス、例えばクラウドPBXへの変更も可能です。特に近年注目を集めているクラウドPBXと番号ポータビリティの併用は、大幅な通信コスト削減につながる可能性があります。

クラウドPBXは、従来の物理的な電話交換機をクラウド上で実現する仕組みで、初期投資を抑えつつ、社内外の通話や内線管理を柔軟に行えます。番号ポータビリティを利用すれば、既存の電話番号をそのままクラウドPBXに移行でき、顧客への通知も不要です。これにより、通信インフラの維持費を削減しつつ、業務の柔軟性と利便性を向上できます。

利用者のニーズにあったサービスが選択できる

利用者は固定電話の番号を変更することなく、自身のニーズに合った通信事業者やサービスを選択できます。例えば、通話品質を重視したい場合は高品質なIP電話サービスを選び、コスト削減を優先したい場合は低料金のプランを提供する事業者へ乗り換える、といったことが可能です。こうした選択肢の拡大により、利用者は自身の業務やライフスタイルに最適な通信サービスを選ぶことができます。

固定電話の番号ポータビリティが利用できないケース

固定電話の番号ポータビリティは、必ず利用できるわけではありません。以下のようなケースでは、固定電話の番号ポータビリティは利用できません。

• 市外局番が異なる地域間での移転
• 050などのIP電話番号
• 対象外の電話サービスや、旧式の設備を使用している場合

番号ポータビリティを利用する前に、現在利用している番号と移行先のサービスが番号ポータビリティに対応しているかを必ず確認しましょう。

詳しい内容は以下の関連記事でも解説しているため、こちらもあわせて御覧ください。

固定電話の番号ポータビリティの手続き方法

固定電話の番号ポータビリティを利用するには、手続きが必要です。どのような手続きが必要なのか、詳しく見ていきましょう。

現在利用している番号が番号ポータビリティに対応しているか確認する

最初に行うべき作業は「今使っている電話番号がポータビリティに対応しているか」を確認することです。対応可否は、現行の契約先であるキャリアや、新たに契約するキャリアのウェブサイトやカスタマーサポート窓口で調べることができます。

この確認作業を怠ると、手続きを進めた後に番号ポータビリティができず、番号を失うリスクもあるため注意しましょう。

変更先の固定電話会社に申し込みを行う

番号がポータビリティに対応していることを確認したら、次に行うのが変更先のキャリアへの申し込みです。「番号ポータビリティを希望する旨」を伝え、必要な申込書類を提出します。申し込み後は、現在契約しているキャリアとの解約処理や番号の引き継ぎ作業が行われ、通常は数日から1週間程度で切り替えが完了します。

固定電話の番号ポータビリティの注意点

固定電話の番号ポータビリティを行う際に、注意しておくべき点があります。通話ができなくなる可能性もあるため、しっかり確認しておいてください。

移行時に通話ができない期間が発生する可能性がある

キャリアの乗り換え手続き中は、一時的に電話が使えなくなる可能性があります。一般的には数分から数時間の範囲ですが、キャリアによっては事前の通知がないケースもあるため注意しましょう。事前に切り替え予定日時を確認しておくことをおすすめします。

インターネット回線の解約には別途手続きが必要

番号ポータビリティはあくまで固定電話の番号に関する手続きであり、インターネット回線の解約や変更とは関連しません。もし電話回線とインターネット回線をセットで契約している場合でも、インターネット回線の解約手続きは別途必要です。

例えば、NTTの「ひかり電話」と「フレッツ光」を同時に契約していた場合、ひかり電話の番号だけを他社に移しても、フレッツ光の契約は残ります。契約状況を整理し、必要な手続きを確認しておくとよいでしょう。

費用が発生するケースがある

固定電話の番号ポータビリティの手続きには費用が発生するケースがあります。主な費用としては、番号移行手数料、新規契約事務手数料、場合によっては工事費などが挙げられます。

また、既存契約に期間縛りの契約がある場合は、解約に際し違約金がかかる場合もあります。無駄な出費を避けるためには事前に確認しておくことをおすすめします。

固定電話の番号ポータビリティに関するよくある質問

固定電話の番号ポータビリティにあたり、よくある質問を紹介します。

「アナログ戻し」は可能？

「アナログ戻し」とは、ひかり電話などの光回線ベースのIP電話サービスから、旧来のアナログ電話回線へ戻すことです。条件を満たせばアナログ戻しは可能ですが、エリアによってはアナログ設備がすでに撤去されている場合もあります。また、戻す際には再工事や手数料が発生することもあるため、事前にNTTや新旧のキャリアに相談しておきましょう。

NTTから他の通信会社へ乗り換え、また元に戻せる？

NTTから他の通信会社へ固定電話を乗り換えた後、再びNTTに戻すことは可能です。2025年1月から双方向の番号ポータビリティを利用することで、可能になりました。ただし、再度NTTに戻ることで初期費用や契約事務手数料、回線工事などが発生する可能性があるため、コスト面も含めて確認しましょう。

双方向の番号ポータビリティとは

新しく導入された「双方向の番号ポータビリティ」について概要を解説します。

2025年1月からサービス開始

従来の番号ポータビリティは、主にNTTから他社へ番号を移す「片方向」の運用が中心でした。しかし2025年1月から開始した「双方向の番号ポータビリティ」により、双方向でのポータビリティが実現しています。利用者は事業者間の移動をさらに柔軟に行えるようになり、より自分に合ったサービスを選択できる環境が整います。

以下のページでは、双方向の番号ポータビリティ対応可能キャリアや番号ポータビリティ対応可能エリアなどの情報一覧がございます。こちらもあわせてご覧ください。

番号ポータビリティでよりよいサービスへ乗り換えよう

固定電話の番号ポータビリティでは、電話会社を変更しても、電話番号はそのまま変更することなく、電話会社のサービスを利用できます。特に企業は電話番号の変更が発生すると、顧客や取引先への連絡に多大な労力やコストを伴いますが、番号ポータビリティを利用することで回避できます。
2025年1月からは双方向の番号ポータビリティも可能となり、今までよりもさらに利用しやすくなっています。ぜひご検討ください。

参考文献

① 「番号が変わらない」ことの心理的安心感（現状維持バイアス）

本文中にある「番号変更が不要」という機能は、既存の顧客が混乱せず連絡を継続できるという点で、心理的ハードルを下げます。これは現状維持バイアス（status quo bias）の典型です。
「人は、損失を避けようとする気持ちが非常に強く、既存の状況（例えば馴染みの番号）を変更することを不安に感じる」
出典：ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー』早川書房, 2012, p.206

② 「クラウドPBXによる通信コスト削減」→ サービス価格転嫁（フレーミング効果）

本文では、「クラウドPBXへの変更による通信コスト削減」が明示されており、企業側の費用構造が改善されます。これは価格転嫁またはサービス改善という形で顧客メリットに繋がる可能性があります。
「人は同じ情報でも表現の仕方（フレーム）によって、異なる受け取り方をする」
出典：リチャード・セイラー／キャス・サンスティーン著『実践 行動経済学 ナッジ！』日経BP, 2009, p.54

③ サービス選択肢の拡大（選択アーキテクチャ）

本文では「利用者のニーズに合ったサービスが選択できる」とあります。これは、選択肢が整っていること自体が利用者の主観的満足を高めるという行動経済学の知見に基づいています。
「選択肢を設計する“選択アーキテクト”が、正しいフレームで構成することにより、人々はより合理的な選択をしやすくなる」
出典：リチャード・セイラー／キャス・サンスティーン著『実践 行動経済学 ナッジ！』日経BP, 2009, p.82