コールセンターシステムとは? 仕組みや導入メリット、選び方のポイントなどを詳しく解説!

電話業務にまつわる課題の解決にはコールセンターシステムの導入が有効です。その機能は進化を続けており、近年ではAI技術を活用した自動化機能や、便利なアシスタント機能なども取り入れられています。
この記事では、コールセンターシステムの仕組みや機能、導入メリット、選び方のポイントなどを詳しく解説します。
コールセンターシステムとは? 導入する目的は?

コールセンターシステムは、コールセンター業務や架電営業を効率化するためのシステムです。顧客からの問い合わせに対応するコールセンターをはじめ、テレアポやインサイドセールス、カスタマーサポートの現場でも導入されています。
コールセンターシステムは、以下のような課題を解決へと導きます。
- 電話がつながりにくく、長い待ち時間が発生している
- オペレーターの応対品質にバラつきがある
- 離職者が多く、慢性的な人手不足に陥っている
- オペレーターの稼働状況や成果を把握できていない
コールセンターシステムの導入には、オペレーター業務の効率化や応対品質の向上、コスト削減といった多くのメリットがあり、幅広いビジネスで活用が進んでいます。

コールセンターシステムの仕組みと機能

多くの場合、コールセンターシステムは複数のシステムで構成されています。具体的には、以下のようなシステムを連携させて、一元的なコールセンターシステムを構築しています。
- PBX
- CTI
- CRM
- FAQシステム
- チャットボット
各システムの特徴や機能を解説していきます。
PBX
PBX(Private Branch eXchange)とは、電話回線の制御を行う機器のことです。外線や内線電話の接続をコントロールします。
以前は、社内に物理的な機器を設置する「オンプレミス型PBX」が主流でしたが、近年では、インターネットを介してPBXの機能を利用する「クラウド型PBX」の需要が高まっています。
CTI
CTI(Computer Telephony Integration)とは、パソコンやシステムなどのコンピューターと電話回線を連携させるシステムです。CTIを導入することで、オペレーターは電話機を使わずに、パソコンの画面から受発信が行えるようになります。
CTIには、オペレーター業務を支援する様々な機能が搭載されています。代表的な機能を以下に紹介します。
ポップアップ機能
CTIと顧客データベースを連携すると、着信時に顧客情報がポップアップ表示されます。パソコンの画面上に、顧客の基本情報や応対履歴が自動的に表示されるため、問い合わせにスムーズに対応できます。
製品によっては、顧客属性に応じてフレームカラーを色分けしたり、注意が必要な場合に警告表示をしたりする機能などがあります。
ACD
ACD(Automatic Call Distribution)とは、事前に設定したルールに基づいて、着信を自動的に振り分ける機能です。問い合わせ内容に応じて適切なオペレーターにつないだり、待機時間が長いオペレーターに優先的に着信を割り当てたりすることができます。
また、ACDには自動音声ガイダンスも搭載されており、オペレーターにつながりにくい際に「ただいま電話が混み合っております」といったアナウンスを流すことが可能です。
IVR
IVR(Interactive Voice Response)とは、コンピューターによる自動音声応答機能のことです。顧客からの着信直後に、「〇〇のお手続きは1を、〇〇のお問い合わせは2を、その他のご用件は3を」といった音声ガイダンスによる案内が行えます。顧客がプッシュ操作を行うと、自動的に適切なオペレーターへ転送される仕組みです。
通話録音
オペレーターと顧客との通話を自動で録音する機能です。後から通話内容やオペレーターの対応を振り返ることができます。音声の録音だけでなく、自動で音声をテキストデータに変換して記録できるものもあります。
通話録音機能は、応対内容の記録やクレームの解決、オペレーターの育成などに有効活用されます。
SMS送信
顧客の携帯電話にショートメールを送信する機能です。パソコンの画面上から簡単にショートメールを送信できます。URLやパスワードなど、口頭では伝えにくい情報を正確に伝達したい場合に用いられます。
具体的な利用シーンとしては、Webサイトの案内や、変更手続きのURLの送付、口頭で受けた依頼の完了通知などが挙げられます。
モニタリング・レポート
モニタリング機能とは、オペレーターの稼働状況や通話内容をリアルタイムに確認できる管理者向けの機能です。応対中に何か問題が発生した場合でも、状況を速やかに把握してオペレーターに適切な指示が出せます。
また、レポート機能を使って、業務の可視化や情報の分析が可能です。例えば、時間帯別着信数のカウントや、オペレーターごとの稼働状況の評価、収集データに基づいたマーケティング戦略の立案など、様々な活用方法があります。
CTIについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
なお、厳密に言うと、CTIはコールセンターシステムを構成する要素の一つですが、重要な機能を搭載していることから「CTI=コールセンターシステム」という認識で扱われるケースも多いです。実際に、多くのCTI製品がコールセンターシステムという名目で提供されています。
CRM
CRM(Customer Relationship Management)とは、あらゆる顧客情報を一元管理するシステムです。顧客の個人情報や過去の問い合わせ履歴などをすべて記録します。受電時に、顧客情報を閲覧しながら対応できるため、状況把握や解決策の提案が速やかに行えます。
また、後日、再度顧客から問い合わせが入った場合でも、履歴を見れば経緯が分かるため、前回とは異なるオペレーターでもスムーズに対処できます。
FAQシステム
FAQシステムとは、よくある質問と回答で構成されたナレッジデータベースです。「顧客向けFAQ」と「オペレーター向けFAQ」の2つの使い方があります。
顧客向けFAQは、顧客から多く寄せられる質問とその回答をWebサイトやアプリ上に公開したものです。誰でも簡単に検索できる仕組みを構築し、顧客による自己解決を促します。FAQの活用が進めば、顧客からの問い合わせ数の削減が期待できます。
オペレーター向けFAQは、電話応対中のオペレーターの疑問を速やかに解決するためのものです。マニュアルの参照や、関連性の高いFAQの検索などが行えます。必要な情報にすぐに辿り着ける仕組みになっており、応対時間の短縮や顧客満足度の向上につながります。
チャットボット
チャットボットとは、テキストベースで顧客からの問い合わせに対応する自動プログラムのことです。顧客がコールセンターに電話をかける前に、まずチャットボットへ誘導する仕組みを構築することで、オペレーターへの問い合わせ件数の削減が期待できます。
コールセンターシステムを導入するメリット

コールセンターシステムの導入によって得られるメリットを紹介します。
コールセンター業務を効率化できる
コールセンターシステムは、電話に関連する様々な業務を効率化します。多彩な機能を活用することで、オペレーターや管理者の負担を大きく軽減できます。
具体的には、着信時の自動振り分け機能や、顧客情報の自動表示機能、応対記録の入力支援機能など、オペレーターをサポートする多くの機能が搭載されているほか、モニタリング機能やレポート機能といった現場のマネジメントに役立つ機能も充実しています。
コールセンターシステムの導入は、業務の省力化やスピードアップにつながり、組織全体の効率性を高められます。
コスト削減につながる
コールセンターシステムの導入で業務効率が向上すると、人件費の削減が見込めます。電話業務の自動化やチャットボットの活用によって、より少ないオペレーター数での対応が可能となるためです。「オペレーターの新規採用が難しい」「離職者が多い」といった、コールセンター業界ならではの人手不足の問題も解決できます。
応対品質が向上する
コールセンターシステムは、応対品質の向上にも大きく貢献します。主な効果を以下に挙げます。
- 待ち時間の短縮
- 応対品質の標準化
- ワンストップ対応の実現
- クレームの削減
- 対応漏れや重複対応の防止
質の高い対応が定着すれば、顧客満足度の向上や成果アップにつながるでしょう。
オペレーターの早期戦力化に役立つ
トークスクリプトやFAQを参照しながら顧客との会話を進められるため、新人オペレーターでも安定した受け答えができます。業務への慣れやスキル習得も早く、短い期間で戦力化します。
また、新人オペレーターが電話対応をする際、管理者が通話内容をモニタリングし、必要に応じてサポートやアドバイスを行うことが可能です。不慣れな状況でも安心して業務に取り組める支援体制が整うことで、人材の定着化にもつながります。
取得データをマーケティングに活用できる
コールセンターシステムに蓄積された顧客情報は、マーケティングに活用できます。顧客の生の声や行動履歴は、マーケティング活動において非常に価値のある情報です。例えば、顧客からどのような問い合わせや要望が多いかをリサーチすることで、今後のサービス改善や新製品の開発に反映させられます。
コールセンターシステムは、電話業務を効率化するだけでなく、顧客ニーズの把握や分析といったマーケティングにも役立ちます。
コールセンターシステムの種類

コールセンターシステムは、以下の3つのタイプに分類されます。
- インバウンド型
- アウトバウンド型
- インバウンド・アウトバウンド兼用型
ここで言う「インバウンド」とは、受信業務(顧客からかかってくる電話に対応する業務)のことで、「アウトバウンド」は、発信業務(企業側から顧客に電話をかける業務)を指します。
インバウンド型
インバウンド型は、その名の通りインバウンド業務に特化したコールセンターシステムです。顧客からの問い合わせや注文受付などを効率的にこなすための機能が搭載されています。コールセンターやカスタマーサポートなど受電業務をメインとする場で用いられます。
アウトバウンド型
アウトバウンド型は、アウトバウンド業務に特化したコールセンターシステムです。架電営業やアンケート調査、代金支払いの督促などがアウトバウンド業務に該当します。テレアポやテレマーケティング、インサイドセールスなど、架電業務を行う場で利用されます。
インバウンド・アウトバウンド兼用型
兼用型は、インバウンド型とアウトバウンド型の両方の機能を備えたコールセンターシステムです。例えば、顧客からの問い合わせ窓口を設置する一方で、架電営業も積極的に行うなど、現場のニーズに沿った運用が可能です。汎用性が高く、受電業務と営業活動のどちらも効率化できます。
コールセンターシステムの導入形態

コールセンターシステムの導入形態は、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。それぞれの特徴や違いを解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型のコールセンターシステムは、自社で保有するサーバーにシステムを構築して運用します。社内で情報を管理するため、外部漏えいのリスクが少なく、必要に応じてセキュリティレベルを上げることが可能です。柔軟に機能拡張や他システムとの連携ができる点もメリットです。
デメリットとしては、運用開始までに時間を要することや、高額な初期コストがかかること、保守運用やトラブル時の対応を自社で行わなければならないことなどが挙げられます。
クラウド型
クラウド型のコールセンターシステムは、オンライン上で提供されます。サービスを提供する事業者と契約を結ぶことで、インターネットを介してシステムが利用できるようになります。

クラウド型のメリットは、比較的低コストであり、導入や運用がしやすい点です。システムの管理やメンテナンスを事業者側に任せられるので、運用負荷が軽減されます。また、インターネット環境があれば場所を選ばず利用できるため、リモートワークにも対応できます。
デメリットとしては、オンプレミス型と比べてカスタマイズ性やシステム連携の面で劣ることが挙げられます。とはいえ、近年ではこのようなデメリットを改善したシステムが多くリリースされており、クラウド型の需要が高まっています。
コールセンターシステムを導入する際のポイント

ここでは、コールセンターシステムの中核を担うCTI製品を選ぶ際のポイントを紹介します。
システムの連携性を確認する
CRMやSFAなど、既存のシステムを継続して使いたい場合は、連携性に注目しましょう。業務で使用しているシステムと連携できるか、どのようなシステムと連携が可能か、などをしっかり確認することが大切です。将来的な拡張性も視野に入れて検討するといいでしょう。
機能や操作性に注目する
コールセンターシステムと一口に言っても様々な種類があり、機能やサポートの範囲がそれぞれ異なります。機能性が充実しているに越したことはありませんが、それらが自社の業務に役立つものであるかが重要です。
また、実際の業務でコールセンターシステムを使うのはオペレーターであるため、操作性や画面遷移の快適さも大切なチェック項目となります。
費用を比較する
オンプレミス型とクラウド型では、費用や導入までの期間が大きく異なるため、初めにどちらのタイプにするか決めておくとスムーズです。
オンプレミス型は、コールセンターシステムの環境構築に多くの費用と時間を要します。余裕を持たせたスケジューリングで、慎重に計画を進めることが求められます。
一方、クラウド型は、低コスト・短期間での導入が可能です。通常、初期費用に加えて、基本料金にオプション料金を足した月額費用が発生します。
セキュリティを重視する
電話業務では多くの個人情報を取り扱うため、コールセンターシステムには高いレベルのセキュリティが求められます。万が一、情報漏えいが発生すれば、顧客からの信頼を損なうだけでなく、社会的信用の失墜や損害賠償請求に発展するリスクもあります。
通信の暗号化やアクセス制御、サイバー攻撃対策など、十分なセキュリティ機能が実装されているサービスを選択しましょう。
サポート体制も重要
サポート体制も大切なチェックポイントです。安定性の高いコールセンターシステムを選択したとしても、システムである以上は不具合やエラーのリスクがあります。また、導入直後は、設定の仕方や操作方法に悩むことがあるでしょう。
サポートに関するチェック項目を以下にまとめました。
- 問い合わせの手段(電話、メール、チャット、専用フォームなど)
- サポートの受付時間
- サポートの範囲
- 時間外対応やオンサイト対応の可否
- 無料あるいは有料か
万が一のトラブルに備えて、信頼性の高い運営会社のシステムを選択しましょう。
コールセンターシステムの導入はプロに相談するのが近道

コールセンターシステムの仕組みは複雑で分かりづらい部分が多くあります。自社に最適なシステムを選定するには、専門的な知識や時間が必要となるため、検討段階からプロに相談するのがおすすめです。

弊社では、クラウド型のコールセンターシステム「AmeyoJ」を提供しています。「AmeyoJ」は、豊富な機能を備えたオールインワンパッケージのCTIシステムです。基本的なCTI機能に加えて、CRMや音声認識、ウォールボード、外部システム連携といった多彩な機能があり、それらを必要に応じてカスタマイズできます。インバウンド業務とアウトバウンド業務の両方に対応しており、現場のニーズに合わせた運用が可能です。
コールセンターシステム「AmeyoJ」の機能一覧や資料など詳しい情報はこちらから
コールセンターシステム導入で業務効率化や顧客満足度向上の実現を
この記事では、コールセンターシステムの仕組みや機能、導入メリット、選定時のポイントなどを解説しました。コールセンターシステムは、電話業務にまつわる様々な課題を解決し、業務効率化や顧客満足度向上を実現します。ぜひこの機会にコールセンターシステムの導入検討を進めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・エビデンス
即時対応と顧客満足
「スピード感のある対応が可能になり、結果的に顧客満足度向上につながる」
これは、「現在バイアス」すなわち「人は将来よりも目の前の利益に敏感である」という傾向を表現しています。
「人は、今すぐ得られる快適さや利益に過度に反応し、長期的な便益よりも即時の満足を重視する」
アリエリー, D.『予想通りに不合理』早川書房, 2008, p.74
すぐに繋がる・待たされない・自動案内が的確という体験は、「今すぐの快適さ」に該当し、顧客の評価を実質的に高めることを現しています。
情報の整備とノイズの排除
「顧客情報が自動ポップアップされる」「トークスクリプトやFAQで新人でも品質対応できる」などの機能は、オペレーターの応対における判断のぶれ(ノイズ)を抑える設計を現しています。
「判断には“バイアス”と“ノイズ”がある。ノイズとは、同じ状況でも人によって判断が異なる現象。標準化と支援はノイズ低減に有効」
カーネマン, D. 他『組織はなぜ判断を誤るのか』早川書房, 2021, p.52
情報の即時提示とスクリプトによる対応統一は、判断のブレ(ノイズ)を抑えるため、サービスの一貫性と公平性が向上し、顧客にとって有利なことを示しています。
パーソナライズされた対応
「CRMと連携して顧客情報を活用」=個別ニーズに合った対応が可能ということを現しています。
これは、選好を尊重するナッジ的アプローチと一致します。
「人は“自分に合っている”と感じる選択肢や対応に好意的に反応する。選択アーキテクトはこの心理に沿って設計すべきである」
セイラー, R. & サンスティーン, C.『実践 行動経済学 ナッジ!』日経BP, 2009, p.82
顧客情報に基づいたカスタマイズ対応は、満足感・信頼感を強化する要因だということを現しています。