【2025年最新】双方向番号ポータビリティ開始について解説! NTT以外の固定電話番号も変更なしで移行可能に

2025年1月、双方向番号ポータビリティが開始されました。現在は、NTT東日本やNTT西日本、および他の複数の通信事業者の間において、固定電話番号の移行における制限が従来よりも大幅に緩和されています。
本記事では、固定電話番号の双方向番号ポータビリティについて押さえておきたい基礎知識をまとめました。従来との違いやメリット、注意点などを詳しくご紹介します。
双方向番号ポータビリティとは

双方向番号ポータビリティとは、固定電話番号の変更はせずに、異なる通信事業者や電話サービスとの間で番号をそのまま引き継ぎできる仕組みのことです。2024年11月、固定電話サービス提供事業者18社によって発表され、2025年1月14日から受付が開始されました。
携帯電話では通信会社を変える際に携帯電話番号をそのまま引き継ぐことが可能な「携帯電話番号ポータビリティ(MNP)」があります。一方、固定電話向けの制度は携帯電話と異なり、番号をそのまま移行できないケースが多くありました。
今回の双方向番号ポータビリティ開始によって、固定電話番号においてもそのまま番号を変
えずにサービスを選択できる幅が広がりました。
この制度のガイドライン等は総務省公式資料「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」(令和7年1月30日)」でも確認できます。
出典:総務省 報道資料『「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン(案)」に対する意見募集の結果及び「固定電話番号の番号ポータビリティの実施に関するガイドライン」』
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban06_02000127.html双方向番号ポータビリティ対象の固定電話サービス提供事業者
双方向ポータビリティの実施において、関連する固定電話番号使用事業者を一覧でご紹介します。対象は以下の18社です(2025年5月時点)。
- 株式会社アイ・ピー・エス・プロ
- アルテリア・ネットワークス株式会社
- 株式会社STNet
- NTTコミュニケーションズ株式会社
- 株式会社エネコム
- 大江戸テレコム株式会社
- 株式会社オプテージ
- 株式会社QTnet
- KDDI株式会社
- Coltテクノロジーサービス株式会社
- 株式会社三通
- ZIP Telecom株式会社
- ソフトバンク株式会社
- 中部テレコミュニケーション株式会社
- 株式会社トークネット
- 楽天モバイル株式会社(楽天コミュニケーションズ株式会社)
- 西日本電信電話株式会社
- 東日本電信電話株式会社
双方向番号ポータビリティ開始前後の違いとは

双方向番号ポータビリティの開始によって、従来の制度から変更された点について解説します。
片方向から双方向に
固定電話番号の引き継ぎについては、従来、NTT東日本・NTT西日本から他の事業者への片方向のみが許可されていました。そのため、NTT東西以外の固定電話サービス事業者から提供された固定電話番号は、他社への引き継ぎができませんでした。
2025年1月の双方向番号ポータビリティ開始後、NTT東西以外の事業者の固定電話サービス・IP電話サービスで新規に受けた番号も、そのまま番号の変更なしで別の事業者を選択できるようになっています(一部、例外もあります)。

同一番号での移転可能範囲についても制度変更あり
NTT東西の加入電話利用者が住所変更する際、ひかり電話・他事業者の固定電話・IP電話サービスなどに変更したい場合に、従来は同じ番号で移転できる範囲がNTT収容局のエリア内に限られていました。
双方向番号ポータビリティ制度の開始によって、同一番号区画のエリア内(例:東京23区の03発信エリア内、大阪の06発信エリア内など)の移転では、同じ番号のままでの移転が可能になっています。
ただし、同一番号区画内でも、技術的制約等の事情によって同じ番号での移転ができないケースもあります。そのため、移転の問い合わせ時や申し込み時に可否を確認することが必要です。
双方向番号ポータビリティの対象番号

双方向番号ポータビリティの制度において、対象となる番号・対象外となる番号をそれぞれ確認しておきましょう。
対象となる番号
- 各固定電話サービス提供事業者から受けた固定電話番号「0AB-J番号」(10ケタの電話番号「市外局番-市内局番-加入者番号」)
- ひかり電話専用番号帯(ひかり電話の新規申し込みで取得した電話番号)
対象外となる番号
多くのコールセンターなどで使用されている050から始まるIP電話番号は、本制度実施において、当面の間は対象外とされています。通信事業者における設備投資コストが引き起こす利用者負担の増加への懸念が、050番号を対象外とした理由のひとつとして挙げられています。
双方向番号ポータビリティのメリット

双方向番号ポータビリティの開始が利用者にとってどのような価値をもたらすのか、ここではメリットを3つご紹介します。
固定電話番号を変更せず通信事業者を選択できる
利用する通信事業者の変更手続きをする際、従来は多くの場合で新たな電話番号を取得することとなっていました。しかし、今回の双方向番号ポータビリティの導入によって、それまで使用していた固定電話番号をそのまま変更せず、クラウドPBX(電話交換システム)やIP電話サービスに移行することが可能となりました。
クラウド型の通信環境へ移行しやすくなったことは、PBXやCTI(コールセンターシステム)などを活用する企業の通信機能改善のために大きなメリットです。複数の通信事業者を比較検討しながら、最適な事業者を選択する自由度が以前より格段にアップします。
通信コストを削減できる
利用者側の選択の自由度が上がることで、電話交換機やコールセンターシステムの市場においては事業者間の競争が生まれます。そのため、以前より安い料金プランの提供が増える可能性が考えられ、結果的には利用者のコスト削減につながるでしょう。
固定電話番号を変更せずに複数拠点から利用可能なクラウドPBX(電話交換システム)やクラウドCTI(コールセンターシステム)などへ移行しやすくなることも、企業の通信設備維持のためのコスト削減に直結すると考えられます。

ビジネス視点でのメリット
顧客にとって既知の電話番号を長く継続的に使用できることは、ロイヤリティ(Loyalty / 企業への信頼や安心感)維持のために重要な要素です。そのため、固定電話番号の変更が原因で既存の顧客や取引先との連絡が途切れてしまうことは、企業の営業活動において大きなリスクと言えます。双方向番号ポータビリティで、営業上のリスクを回避しながら企業の通信設備をアップデートできます。
また、東京03や大阪06などの固定電話番号が維持されている企業なら、大都市にオフィスや営業拠点があるという印象を与えることができ、企業の信頼度を高めるためには効果的です。
既存の電話番号が維持できれば、ホームページなどに掲載している電話番号の更新確認や、顧客への番号変更案内が不要となります。このような電話番号変更によって生じる事務コストや手間が省けることもメリットです。
固定電話番号ポータビリティの申し込み方法

固定電話番号ポータビリティの申し込みは、利用者が新たに契約する事業者(固定電話会社)と手続きを行うだけのワンストップで基本的に完了します。
新たな移行先となる通信事業者に伝える必要がある情報には、以下のような項目があります。必ず事前に確認しておきましょう。
- 現在使用中で移転したい固定電話番号
- 契約名義
- 設置場所の住所
- 契約中の通信事業者名
- 利用しているサービス内容 など
通信事業者によっては、使用したい住所のエリアがサービス対応範囲外となるケースもあります。申し込みの際は、契約サービスの詳細まで事前にしっかり確認しておくことが必要です。
固定電話番号ポータビリティ利用の際の注意点

変更前の通信事業者の契約を解約し、変更後の通信事業者と新たに契約する固定電話番号ポータビリティの利用にあたっては、注意点が4つあります。
- 事務手続きの費用以外に、回線工事費や解約に係る違約金等が発生するケースがある。
- 現在契約中の固定電話会社に対して未払い残高等があれば、精算が必要。
- インターネットのサービスとあわせて固定電話を契約していた場合、別途インターネット回線の解約手続きも必要となるケースがある。
- 移行したい固定電話番号に関連して設定されていたオプションのサービスがあれば、それぞれに対して解約が別途必要になる場合も。
実際の契約内容はケースごとにさまざまです。移行手続きをスムーズに進めるためにも事前に確認しておきましょう。
双方向番号ポータビリティで番号を変更せず最適なサービスの選択・検討を!
固定番号をそのままで異なる通信会社が提供するサービスに移行できる双方向番号ポータビリティの開始で、利用できる通信サービスの選択の幅が大きく広がりました。
企業の通信環境を見直し最適化することは、業務効率化に直結します。クラウド型のCTI(コールセンターシステム)やPBX(電話交換システム)などは、新たな設備工事が不要で、初期費用も運用コストも抑えられる利点があり、新制度の開始で積極的に検討しやすくなりました。
LIPSEブランドが提供しているクラウドCTI「AmeyoJ」、クラウドPBX「LIPSE Cloud PBX」などに関する導入・サポートのご検討やご質問などは、Webサイトのお問い合わせフォームをぜひご利用ください。

ケーススタディ LIPSE SIPトランクで番号そのままPBXをクラウドに
https://lipse.jp/categ-siptrunk/portability-start/よくある質問(FAQ)
- 双方向ポータビリティの対象番号はどれですか?
-
一般的な固定番号(03や06など)と、ひかり電話専用番号帯が対象です。050番号は対象外です。
- 番号を移したいのですが、どこに申し込めばよいですか?
-
新たに契約したい事業者に申し込むだけで、番号移行が可能です(ワンストップ化されています)。
参考文献
一貫性のある連絡手段は信頼維持に貢献する
引用文:
“In business communications, a consistent contact number serves as a trust anchor. Changes in such identifiers can disrupt customer expectations and weaken perceived reliability.”
(Weinstein, A. Superior Customer Value in the New Economy, 2004)
出典:
Weinstein, A. (2004). Superior Customer Value in the New Economy. CRC Press.
(アート・ワインスタイン『新時代の顧客価値戦略』、CRC出版)
電話番号のような「接触点情報」が変更されると、顧客は「会社が変わった」「信用できなくなった」などの心理的不安を抱き、離脱率が高まることが示唆されています。
既知の番号継続はロイヤルティ維持の心理的基盤になる
引用文:
“Customer loyalty is significantly influenced by the perceived effort required to maintain the relationship. Retaining the same phone number lowers psychological and operational friction.”
(Reichheld, F. The Loyalty Effect, 1996)
出典
Reichheld, F. F. (1996). The Loyalty Effect: The Hidden Force Behind Growth, Profits, and Lasting Value. Harvard Business Review Press.
(フレデリック・ライクヘルド『ロイヤルティ経営』、HBR出版)
「番号変更がない」ことは、顧客から見た「付き合いやすさ」を高め、わざわざ別の連絡手段を探す必要がないため、関係性維持に資するとされます。
認知バイアスにより「既存番号が維持される安心感」が行動継続を促す
引用文:
“People tend to avoid change when loss is involved, even if the alternative is better. Keeping existing identifiers, like a phone number, reduces the perceived loss and increases retention.”
(Kahneman, D., Thinking, Fast and Slow, 2011)
出典(SIST 07書式):
Kahneman, D. (2011). Thinking, Fast and Slow. Farrar, Straus and Giroux.
(ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー』村井章子訳、早川書房)
これは「損失回避バイアス(Loss Aversion)」と呼ばれ、変化によって何かを失うと感じることに人は強く反応します。顧客にとって「企業の電話番号が変わらない」ことは、行動を変えずに済む安心材料です。
記事監修:株式会社IPS LIPSE 技術監修チーム
クラウドCTI「AmeyoJ」およびクラウドPBX「LIPSE Cloud PBX」の開発・運用を担当する実務チームが監修。総務省制度やIP網移行の技術要件にも精通。