コールセンターを立ち上げる手順とは? システムや運営体制構築のポイントも解説!
コールセンターの立ち上げを考えているが、具体的なイメージが浮かばないといった声が少なくないようです。必要なヒト・モノ・カネは? 何をどこまで揃えるべきなのか? いざとなると、何から手を付ければよいのかわからないという経営者や担当者の参考となるように、この記事ではコールセンターの立ち上げについて手順や構築ポイントを解説します。
なぜコールセンターが必要なのか
コールセンターに求めるゴールの検討
顧客からかかってくる電話への対応業務を上手にマネジメントすることは、企業の発展にとって重要だといえます。そこで検討される有力な選択肢のひとつがコールセンターの立ち上げです。コールセンターの立ち上げには目的を明確にしたうえで、ゴールの検討と設定が欠かせません。ゴールとは、コールセンターの目的を具体化したものです。
ところで、コールセンターとひとくちにいってもその役割はさまざまです。
- 製品の利用者から入る操作や使用に関する問い合わせへの対応
- 見込み客からの資料請求や一般的な問い合わせへの対応
- 注文内容の確認や契約変更に関する手続き対応
その他、コールセンターには複数の役割があり、名称にかかわらずその中のひとつに絞って運用されているケースもあれば、複数に対応しているケース、あらゆる問い合わせをすべて引き受けているケースがあります。
また、同様の役割を担っているコールセンターであっても、対応内容には各社の特徴が表れるものです。実際に顧客の立場で他社のコールセンターに電話をしてみると、A社では話の最後に新製品の情報提供がされたり、B社ではこちらから質問したことだけでなく、疑問点や不満点のヒアリングに熱心だったりと、会社による違いに気付くことがあるのではないでしょうか。
この違いがどこからきているのかといえば、コールセンターの目的、ゴールの違いだといえます。
- 顧客満足度を上げる
- 業務効率のアップ
- 売上高(+利益)を増やす
顧客満足度の向上も業務効率のアップも最終的には売上高(+利益)を増やすためのものですが、コールセンターでは上記のような個別のゴール部分にスポットを当てた構築と運営が行われているといえるでしょう。ゴールがひとつならひとつに、複数なら複数に応じた構築と運営が必要です。
目的、ゴールが曖昧なまま立ち上げに取り掛かった場合、効果的な構築や運用ができない恐れがあります。
窓口の現状を把握する
解決すべき課題を明確にしてゴールを設定するためには、窓口の現状把握が不可欠です。コールセンターに相当する部署がない場合、顧客からの問い合わせなどを受け付ける窓口は広報部、営業部といった対外的な接触が多い部署だけでなく、幅広い部署におよんでいる可能性があります。
まずは、各部署レベルでの対応状況と顧客対応に関する組織や教育体制、運用プロセスやマネジメント、システム構成をチェックし、問題点や不足している点を洗い出します。
コールセンターの設置形態
通信回線やCTI(コンピュータと電話の統合技術)が発達した現在、コールセンターの設置場所、設置形態は大きく変化しています。電話がつながって情報のやりとりさえできれば業務が成立するコールセンターを、家賃の高い大都市圏の本社内に設置する必要性は低いといえるでしょう。
実際、近年では北や南の地方都市にコールセンターを開設する企業が増えています。低コスト化のみならず、地方の雇用や経済活性化にもつながることから、この動きは今後も拡大しそうです。また、SIPトランクの普及などにより、テレワーク型のコールセンターを後押ししています。自社にあった設置場所、設置形態の検討も重要な課題です。
コールセンターを設計する
コールセンターの業務を設計する
コールセンターで処理する業務を洗い出し、オペレーターの配置や標準的な対応方法、履歴の記録、定期報告の内容、さらには非常時における運用法といった作業手順を具体的に定めます。また、組織図作りと連絡網の明確化も必要です。日常のコールセンター業務で曖昧な部分が生じないだけでなく、緊急時に慌てないようにあらゆる事態を想定したうえで検討を行います。
マネジメントと組織の編成
次に必要となるのがマネジメントに関する設計で、作業手順、プロセスどおりにコールセンターが運営されているかどうかを管理する方法を決めます。基準やマニュアルは作って終わりではありません。逸脱した作業が行われていれば、ゴールに到達することが困難になります。また、手順通りに実施されていればよいというものではなく、効果が出ているかどうかのチェックが必要です。効果が薄いと判断されれば、改善策を検討して実施する必要があります。
マネジメントの判断に使用されるのが具体的な指標・数値で、KPI(重要業績評価指標)と呼ばれるものです。コールセンター業務においては、主として以下のような指標が考えられます。
- 1日または1時間あたりの対応件数
- 1件あたりの通話時間
- 顧客アンケート(5段階などによる)の評価
- オペレーターの稼働率
マネジメントの設計と密接不可分となるのが組織編成です。業務設計で組織図作りに触れましたが、業務設計とマネジメント設計の内容を実行に移すために必要な組織の体制をここで決定します。人員の規模、人材の必要条件、チーム編成と役割の明確化が重要です。
マニュアルの制定
オペレーションやマネジメントなど、適切な統一運用を行うための各種マニュアルの制定を行います。
(オペレーター用マニュアルの必要項目例)
- 業務手順マニュアル
- CTIやCRM(顧客関係管理システム)等の操作マニュアル
- 担当する商品やサービスに関するマニュアル
- 電話応対マニュアル
- よくあるQ&A
- エスカレーションマニュアル(指示の要請・引継ぎ等)
- 緊急時の対応マニュアル
オペレーターをまとめる立場でもあるマネジメント担当者には、オペレーター用マニュアルの内容に加えて、CTIやCRM等のマネジメント担当者向け操作マニュアルやコールセンター全体の管理マニュアルが必要です。個別にはKPIの管理運用に関するマニュアルやシフト作成マニュアル、配置人材の一覧表、勤怠管理マニュアルなどがあります。
必要な環境とシステム構成
PBXとネットワーク
コールセンターの最重要システムといえば電話に関するシステムです。
まず、古くからある仕組みとして、複数の電話に効率よく対応するコールセンターでは、PBX(構内電話交換機)とその端末となる電話機を使用しています。加えて、通話しながらパソコン操作や商品説明書のページをめくるといった作業を行うオペレーター用に、受話器を持つ必要がないヘッドセットの用意が必要です。
PBXといえば従来は文字通り構内に設置するオンプレミス型が主流でした。しかし、クラウド環境が広がりを見せている現在では、構内に装置を設置する必要がないクラウドPBXサービスに注目が集まっています。クラウドPBXでは、SIPトランク(SIP trunking・インターネット上のIP技術を用いた通話回線のサービス)から、同じくインターネット上で提供されるクラウド上のPBXを介して、社内(構内)のCTIシステム(後述)や通話端末(電話機は無く、ヘッドセットのみなど)へ接続される仕組みです。
また、CTIもオンプレミスではなくクラウド型で提供される場合があり、クラウド型のCTIではPBXの役割も兼ねていて、別途のPBXは不要となるケースが殆どです。
また、コールセンターにかかってくる電話の本数に対応できるだけの電話回線(電気通信事業者が提供する固定回線、あるいはIP電話の仕組みを利用したSIPトランク)と、電話以外の業務に必要な通信回線、そして社内ネットワークが必要です。通信回線は本数があればよいというわけにはいきません。安定した運用が可能となる高速で大容量の回線が求められます。
CTIとCRM
コールセンターの運営にあたっては、電話とパソコンをつなぐCTIや顧客管理を行うCRMなどのサポートシステムが不可欠となりつつあります。問い合わせ内容別に接続先を振り分けることによってオペレーターの負担を軽減し、コールセンター業務を効率化(IVR、自動音声応答システム)したり、電話をかけてきた顧客の情報が自動表示され対応を円滑にしたりとメリットは大です。
勤務しやすいオフィス空間を準備
コールセンターには他の部署以上に快適なオフィス空間が必要だといっても過言ではないでしょう。オペレーターは基本的に座ったままで電話を受け、目の前のパソコンモニターやマニュアル類を見ながらの勤務を続けます。多くの時間がまず席を立つことができない電話中となる勤務形態です。
そのため、パソコンやモニターが使いやすいことは当然として、疲れにくい上質な椅子と使い勝手のよい机、過不足のない什器備品を選ぶ必要があります。また、ほどよい明るさの照明と快適な空調、雰囲気のよい内装やオフィスレイアウトなど、勤務しやすい工夫も重要です。
さらに、勤務中はほぼ装着することになるヘッドセットの着け心地や性能にも注意しましょう。耳が痛くなるとか、ズレてくる、相手の声が聞き取りにくいといった問題がないか、導入前のチェックが必要です。
セキュリティ対策や機能面でのシステム比較が重要
コールセンターには膨大な量の既存客や見込み客の情報が集まってきます。顧客情報を扱うにあたり、何よりも重要といえるのがセキュリティ対策です。たとえ少しでも情報漏洩が起きてしまえば、会社への信頼が崩れかねません。
社内ネットワークを含めた自社のセキュリティ対策はもちろんのこと、システムの選定・構築にあたっては、しっかりと比較・検討して万全のセキュリティ体制をとっているシステムを導入する必要があります。
セキュリティ対策と同時に比較・検討しなければならないのが機能です。十分に検討しないまま導入してしまうと、稼働開始後に思っていたような運用ができないといったトラブルが生じかねません。
コールセンター業務のカギを握る人材育成
組織編成を実現する採用活動
コールセンターの立ち上げが上手くいくかどうかのカギを握るポイントのひとつが、組織編成で算出した人員を充足するための採用活動です。単に人数が揃っていればよいわけではなく、必要な人材の条件を満たしたうえで、より優秀な人材を確保するための取り組みが求められます。
採用活動で利用できる主なメディアは以下のとおりです。
- オウンドメディア
- 求人サイトと転職エージェント
- ハローワークの求人票
- 求人誌
オウンドメディアなら採用に関する外注費用をかけずに自由な情報発信で人材募集を行えます。ただし、オウンドメディア自体が新しい場合は十分に認知されておらず、告知効果は期待薄です。同様に、どのメディアを利用してもメリットとデメリットがあることから、自社にとってよりメリットの高いメディアを選ぶとよいでしょう。場合によっては、他のメディアも含めてさらに募集の間口を広げておくのも有効です。また、自社で雇用する以外に派遣会社の利用も考えられます。
基本的な研修の実施
人材の条件にもよりますが、新規スタッフとして社会人経験が乏しい人材を採用する場合もあるでしょう。そのときは、コールセンター特有の内容だけでなく、一般社会人としての各種研修が必要です。挨拶や報連相、心構えといった新人研修的な内容が主となります。就業規則や社内制度に絡む内容は、経験者にも説明が必要です。
コールセンター要員としての専門的な研修については、コールセンターの設計で決まった内容の実施に向けたカリキュラムを策定します。オペレーターとしての基本的な電話の応対から応用編、エスカレーションも含めたロールプレイング(稼働開始後はOJTを含む)などです。マネジメント担当者にも管理者用の研修を用意します。
継続が必要な人材教育
コールセンターで電話対応にあたるオペレーターの顔は、通常、顧客に直接見えることはありません。しかし、見えないとはいえ会社の顔であることは間違いないでしょう。業務内容は異なるものの、会社の顔となる点では直接的に顧客と接している営業マンと同様です。
そのため、一定レベル以上の高品質な対応ができる要員を維持するために継続的な人材教育が求められます。コールセンター業務は自社の事業内容の変化やシステムの更新、実践に基づく顧客対応の見直しなどで常にブラッシュアップされ得るものです。そのための教育は必須であり、人材教育に終わりはありません。
また、コールセンターについては離職率の高さを指摘する声もあり、離職を防ぐ意味での効果的な人材教育も必要です。それに関連して、人材管理面も含めたマネジメントする側の研修も欠かせません。
オペレーターのスキル次第で企業の評価が変わる
会社の顔であるオペレーターの対応、電話での受け答えスキルがそのまま会社の評価につながったとしても不思議ではありません。声だけとはいえ、声だけだからこそ最初の印象が肝心です。会話のスタート時は少し意識して明るく張りがあり聞き取りやすい発声とスピードで話します。
その後は会話の流れに応じた抑揚をつけたり、間をとったり、相手の状況(年齢、感情の様子など)に合わせた話し方が大切です。
注意すべきは、誤解を招く言葉を使わないことで、不可能な事柄でない限り、明確な回答を示す必要があります。わからないことは躊躇せずエスカレーションするなど、オペレーターが抱え込まない体制が重要です。
また、電話の用件を素早く把握し、顧客が望んでいる回答のカタチを間違えないこともポイントになります。極端な例ですが、料金の計算方法を質問しているのに支払い方法の説明をされたのでは怒りたくもなるでしょう。素早く計算方法を案内することで、顧客には「無駄な時間を使わずに解決することができた」と感じてもらうべきシーンです。
使い方がわからなくて不満感を露わに架電してきた顧客に対して、単に操作説明をするだけでは話が終わらないかもしれません。「お客様は神様」とまではいわなくとも、合理的な範囲でその感情に共感を示しながら話をよく聞き、そのうえで操作方法を説明するといった対応法も考慮されます。
その結果、例えばクレームになりかねない話であったものが、結果的に新たな顧客の紹介を得られるまでになるなど、評価の転換が起きることもあるでしょう。これもオペレーターの対応スキルによるところが大きいといえます。
コールセンター立ち上げでよくある疑問ポイント2つ
コールセンターはある程度の規模が必要?
コールセンターを設置しているといえば、かつては大企業か通販の会社のイメージが大きかったといえるでしょう。しかし、ITなど各種システムやインフラが発達し低コスト化している現在では、目的や規模に応じたコールセンターの立ち上げが容易となっています。コスト削減や顧客満足度のアップなどで、コールセンターに期待する点が大きいのは大企業も中小企業も同じです。
むしろ、人材が定着しにくい点に困っている中小企業がCTIとCRMをフル活用したコールセンターを設置することで、電話対応・顧客対応の煩雑さにストレスを感じていた人材の流出防止に役立つといえます。たとえばクラウドサービスを導入することで、パソコンとインターネットだけ用意すれば、もっとも素早く低コストでの開設が可能です。
自社での運用が難しそうな場合は?
検討の結果、コストその他の原因から自社でコールセンターの運用が困難であると判断した場合は、コールセンター代行業の利用を考えてみるものよいでしょう。しかし、自社では無理だとの判断を自社だけで行ったのなら、再考の余地があるかもしれません。専門のノウハウと経験があるコンサルティング会社に相談し、そのうえで結論を出しても遅くはないでしょう。
コールセンターの立ち上げは目的を明確にしてすすめる
コールセンターの立ち上げは電話システムと支援システムを用意し、人員を配置すればできるわけではなく、目的を明確にして進める必要があります。顧客対応などの業務内容を構築するシステムも、人材に対する教育内容も、すべては目的、ゴールに合わせて設計、設定されるものです。
目的、ゴールは明確になったものの、そのための設計がわからないといった事態を避けるためには、専門家に相談して進めるとよいでしょう。