SIPトランク/SIPトランキングで企業の音声コミュニケーションを刷新
- IP電話時代の要に浮上したSIPトランク -

電話コミュニケーションを活性化するイメージ

広く使われている加入電話やISDN、そして急速に普及したIP電話など、現在の社会にはいろいろな電話サービスが浸透しています。企業の音声コミュニケーションを低コストで、効率的に運用するには、適材適所のサービス選択と組合せが必要ですが、それに欠かせないツールがSIPトランク/SIPトランキングです。

目次

電話とインターネットを連動するSIPトランク/SIPトランキング

電話をビジネスに多用する企業や団体にとって、欠かせないツールの1つが「SIPトランク」です。オフィスからは存在が見えず、通信の専門用語で語られることが多いため、一般のビジネスパーソンには少し分かりづらいのですが、ここではSIPトランクのアウトラインと誕生した背景、そして現在のビジネスシーンにおける位置付けを見ていくことにしましょう(SIPトランクはSIPトランキングと呼ばれることもありますが、以後はSIPトランクに統一します)。

まずSIP(Session Initiation Protocol:シップ)ですが、日本語にすると、インターネットで“通信路を初期化するための規約”です。“通話ができるようにするための手続き”と言い換えてもいいでしょう。私たちが普通に接してきた電話は、通話に必要な手続きなど、あまり意識することはありませんが、インターネットの環境ではそう簡単にいきません。

その理由に進む前にトランク(Trunk)の意味を定義しておきます。ここでは“複数のチャンネル(電話回線)を束ねた単位”と考えてください。例えば、電話を何回線か使えるようにして、A社とNTT東西/KDDIなどの電話局の間、あるいはA社とB社間を結んだ状態を、“2地点間でトランクを設定した ”という言い方をします。

トランクは通話ができる回線(チャンネル)を束ねるイメージ

そしてSIPトランクは、“企業の電話とインターネットをSIP方式でつなぐシステム”です。別の視点から言うと、企業向けに“SIP方式のトランクを提供するサービス”です。稼動する形態と導入企業のメリットは、次の項から掘り下げていきますが、前提知識として電話とインターネットの違いをおさらいしておきましょう。

電話とIP、異質の通信を連携するSIPトランク

1877年に発明された電話は、発祥国アメリカから数十年の間に先進諸国に拡がり、いまや社会インフラの1つとして機能しています。一方、インターネットは、もともと論文などのデータを共有するネットワークを起源とし、1990年代後半に一般に開放されてから、10~20年ほどの間に電話と並ぶインフラとして浸透しました。

電話とインターネットは、通信技術の性質が別のものです。通信相手の指定は電話が電話番号、インターネットがIP(Internet Protocol)アドレス。通信の遅延に対する要求は電話が厳しく、情報共有やメールが主目的のインターネットは、多少の遅れは許容できるという特徴があります。

インターネットのイメージ

料金体系も違っていて、電話は距離と通信時間をベースに課金しますが、インターネットは定額制で、距離と時間の制約はほとんどありません。そこでインターネットの遅延などの性能をできるだけ高め、電話もインターネットに乗せることができれば、既存の加入電話などに比べ、安価な料金で通信できるようになります。SIPトランクの源流には、このような異質の通信技術の併存、そして音声通信のIP化という流れがあります。

インターネット上に通話路を作るSIP

SIPについて、もう少しだけ解説しておきましょう。
NTT東西などの加入電話に代表される電話網では、電話がつながるまでに以下の手続きを踏みます。

  1.  着信先の電話番号を指定
  2.  電話局の市内交換機に接続
  3.  中継交換機でリレー(相手が市外の場合)
  4.  着信先が収容されている交換機に接続
  5.  交換機と着信先を接続(着信音を鳴らす)

インターネットに電話の機能を乗せるには、この手続きをインターネット上で再設計する必要がありますが、通信方式として定めたのがSIPというわけです。SIPの主な役割は、“通信相手を特定して、通話路を確立すること”。相手の特定は、電話番号とIPアドレスを対応付ける処理が必要ですが、これを受け持つのがSIPサーバーです。発信時は、電話機から番号を入力すると、サーバーが番号に対応する相手を照合。着信先を特定したサーバーが電話機をコールし、着信先が受話器を取ると通話が始まるという流れです※。

※SIPのもう少し詳しい仕組みは、当社サイトのブログ「電話の基盤技術とトレンドを知る(後編)」も参照してください。

SIPの基本動作

電話番号を入力するとSIPサーバーがIPアドレスを照会

SIPの特性はビジネスでも生きる

企業のネットワークはIP化が進み、SIP方式で稼動する電話(IP電話)も広く使われています。そこでSIPトランクの活用となります。
それが、“社内のIP電話網”と“社会の電話網(公衆通信網)”をつなぐこと。
企業ネットワークと加入電話に代表される公衆網を、SIPトランクのプロバイダー(提供事業者)を介して接続し、企業内からIP電話で公衆網と通話ができるようにします。

SIPトランクのサービスは、一般に以下の要素で構成します。この場合の「公衆網」は、NTT東西の加入電話網など、PSTN(Public Switched Telephone Networks)と呼ばれる公共的な通信網と考えてください。

 SIPトランクは企業のネットワークと公衆通信網をSIP方式で連携

SIPトランクの稼動イメージ

繰り返しになりますが、SIPトランクの基本機能は“SIP方式の電話回線を提供すること”。インフラである回線を供給するサービスです。他分野の企業向けソリューションのように、データベースを導入して顧客情報を一元管理する、最新のクラウド型アンチウイルスを採り入れてセキュリティリスクを下げる、といった分かりやすい形がありません。設計と運用方法も、企業の業務形態とシステム環境によって違ってきます。

SIPトランクの特徴が出やすい分野として、コールセンターがありますので、ここから先はコールセンターの業務を通して、SIPトランクの稼動例と導入効果を見ていくことにしましょう。

コールセンターを運営している企業は、通常はPBX(Private Brunch Exchange:構内交換機)を設置して、公衆通信網からの着信を空いている回線に振り分けます(発信はオペレーター→PBX→公衆網)。このシステムにSIPトランクを導入する場合、PBXを中心とした社内の音声ネットワークを、SIPトランクのプロバイダーのデータセンター(DC)に、インターネット回線でつなぎます。

 SIPトランクを提供するデータセンターの主な機能

企業とDCとの間は、専用回線なども利用できますが、IPとの親和性やコストの点で、インターネットで仮想的な専用線を設定できるインターネットVPN(Virtual Private Network)を使うケースが多いようです。なお、この形で運用する場合、DC側には公衆網を提供するNTT東西やKDDIなどの大手通信事業者とつなぎ、公衆網の先にいるエンドユーザーとの間で、一定品質の通信を確保する仕組みが欠かせません。

SIPトランクで一歩踏み出したサービスを実現

PBXをSIPトランクのDCと接続することで、コールセンターを運用する企業には、通信コストの削減や柔軟な音声サービスの運用、そして拡張性と発展性と行ったメリットが期待できます。

まず、通信コスト削減ですが、すでに触れた通り、IPの特性は通信時間と距離に依存しない点です。SIPトランクの導入環境では、企業とDCの間は安価なインターネット回線であることに加え、IP電話の利用機会を増加することで、企業全体の通信コストの削減が期待できます。

2番目のポイントは、柔軟なサービス設計です。例えば、NTT東西などの加入電話網の場合、電話番号は市内交換機が受け持つエリア、つまり位置情報と対応する番号体系です。一方、IPネットワークのIPアドレスは、ソフトウェアで識別する技術ですから、交換機が設置された位置情報のような制約はほとんどありません。

例えば、オフィスの移転時には、電話番号の変更やPBXと周辺機器の調整が発生しますが、SIPトランクによる電話回線の供給体制があれば、番号の変更は不要でPBXの調整もありません。また、新製品の発表と同時にキャンペーンを打つ、といったビジネスの節目には、電話の需要が急増しますが、こうした状況にもDC側で柔軟に回線の増強ができます。既存のPBXだけで運用する場合、加入電話やISDNの新規番号の取得、PBX側のトランク増設などの作業が発生しますので、企業にかかる負荷の度合いは比べるまでもないでしょう。

音声コミュニケーションとSIPトランクを軸にビジネスの拡張も

SIPトランクの重要度が高まる要因として、世の中のIP統合の流れが加速している点が挙げられます。いま世界各国で、公衆通信網をIP方式に統合するプロジェクトが進んでいます。国内では、NTT東西が“PSTNマイグレーション”というプロジェクトを推進しており、2025年をメドにPSTNをIP方式に置き換えます(置換の対象は加入電話とISDN)。

インターネットが社会基盤となった現代、もはや電話を中心とした音声を使うサービスのIP化の流れは止まりません。電話とIPアプリケーションの連動、例えば、音声を自動録音して内容を分析し、顧客サービスの向上、マーケティング活用に結びつけるといった展開も期待されます。これが前節で挙げたSIPトランクに期待できる効果の3番目、“拡張性と発展性”です。

IPネットワークが拡散していくイメージ

IPネットワークの拡がり

通信ネットワークの世界は、IPの技術を軸に大きく変化しています。5年後、10年後の通信を見通すことは難しいのですが、当面は社内電話の資産を公衆通信網とIPでつなぐSIPトランクの重要度が変わることはないでしょう。

音声コミュニケーションを重視する企業や団体は、現在のビジネスニーズに呼応したSIPトランクをうまく使いこなしていきたいものです。

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