ロケーションポータビリティとは? 双方向番号ポータビリティとの関連性を解説

「ロケーションポータビリティ」は、双方向番号ポータビリティを理解する上で欠かせない用語の一つです。基礎知識として、その意味や目的を正しく知っておきましょう。
この記事では、ロケーションポータビリティとは何か説明した上で、双方向番号ポータビリティとの関連性や活用事例について解説します。
固定電話におけるロケーションポータビリティとは

ロケーションポータビリティとは、引越し等で利用者が移転しても、現在の電話番号を継続して使用できる仕組みのことです。原則として、同一番号区画内の移転を対象とします。
つまり、市外局番が同じ範囲内での引越しであれば、電話番号を変えることなくそのまま使用することができます。
ロケーションポータビリティのメリット

ロケーションポータビリティには、次のようなメリットがあります。
- 電話番号を継続して利用できる
- 移転時の業務負荷を軽減できる
- 混乱や機会損失を避けられる
- 信頼性や広告効果を維持できる

それぞれのメリットを詳しく解説します。
電話番号を継続して利用できる
ロケーションポータビリティの最大のメリットは、引越しやオフィス移転の際に、現在の電話番号をそのまま引き継ぐことができる点です。顧客や取引先に対して番号変更の通知などをする必要がなく、ビジネスへの影響を最小限に抑えられます。
移転時の業務負荷を軽減できる
ロケーションポータビリティの適用は、引越しやオフィス移転時の業務負荷を軽減します。仮に新しい電話番号に変更するとなると、それに伴い多くの作業が発生します。
- 税務署や市区町村役場、銀行など関係各所への届け出
- 顧客や取引先、社内への周知
- Webサイトやパンフレット、広告の修正
- 名刺の変更
- 社内システムの更新
電話番号の変更には、多くの労力がかかります。既存の電話番号を引き継ぐことによって、このような作業やコストを省くことができます。
混乱や機会損失を避けられる
事業の継続性を保てることも、ロケーションポータビリティのメリットです。電話番号の変更には、業務の一時的な停止や機会損失といったリスクがあります。例えば、「番号変更の周知が不十分で業務に混乱が生じる」「顧客からの注文を逃がしてしまう」といったことが起こり得ます。ちょっとした混乱や連絡がつかない状況が、その後のビジネスにダメージを与える可能性もあります。
現在使用している電話番号を引き継ぐことができれば、このようなリスクを回避することが可能です。
信頼性や広告効果を維持できる
ビジネスにおいて、会社の代表番号は「企業の顔」としての役割も担います。長年使用してきた電話番号が社会的信頼性の構築に一役買っていることは多く、電話番号を変更しないことは、顧客や取引先からの信頼の保持につながります。
また、電話番号が変わらなければ、世間によく知られている広告や宣伝物を引き続き使用できるため、これまでに培ってきた宣伝効果が維持されます。
双方向番号ポータビリティの開始によってロケーションポータビリティの範囲が拡大

双方向番号ポータビリティ制度の開始により、ロケーションポータビリティの適用範囲が広がったことをご存知でしょうか。
これまでは、同一番号区画内であっても、収容局が異なる場合は電話番号の引き継ぎができませんでしたが、現在では、同一番号区画内であれば収容局に関わらず、電話番号の引き継ぎが可能となっています(※技術的制約等により不可の場合有り)。
移転可能範囲の変更点
【以前の適用ルール】
同一番号区画かつ、同一収容局のエリア内での移転(同一番号区画、他収容局への移転は適用不可)
【現在の適用ルール】
同一番号区画のエリア内での移転(同一番号区画内の移転であれば、収容局に関わらず適用可能)
双方向番号ポータビリティの概要

ここでは、双方向番号ポータビリティについて少し掘り下げて解説します。
双方向番号ポータビリティとは、現在使用している固定電話番号を変更することなく、別の通信事業者に乗り換えられる仕組みです。2025年1月から利用受付が開始されました。
従来の片方向番号ポータビリティとの大きな違いは、様々な事業者間での番号移行が可能となった点です。これまでの番号ポータビリティは、NTT東日本・西日本から他通信事業者への移転のみを対象としており、その逆は認められていませんでした。双方向番号ポータビリティの開始に伴い、この制限が解除され、現在ではNTT東日本・西日本だけでなく、光コラボレーション事業者やIP電話事業者など、様々な通信事業者間での電話番号の移行(双方向の番号ポータビリティ)が可能となっています。
番号ポータビリティが可能なケース
- NTT東日本・西日本から他事業者への移行
- 他事業者からNTT東日本・西日本への移行
- 他事業者間での移行
(※他事業者には、一般の固定電話サービスやIP電話サービス等が含まれます)
このような双方向番号ポータビリティの開始によって、利用者は固定電話番号を保持しながら、自由に通信事業者やサービスを選択できるようになりました。選択肢の幅が大きく広がったことで、コスト削減やビジネスの効率化を実現しやすい環境になっています。
双方向番号ポータビリティを利用するには?

固定電話の双方向番号ポータビリティの手続きは、通常、移転先事業者の窓口で行います。基本的な流れは以下の通りです。
- 移転先事業者に番号ポータビリティを申し込む
- 番号ポータビリティの可否確認が行われる
- 番号ポータビリティの工事日程(回線切り替え日時)を調整する
- 移転先事業者が回線切り替え工事を実施する
双方向番号ポータビリティにはいくつかの条件があり、状況によっては適用できないことがあります。適用不可のケースとしては、市外局番が異なるエリア間での移転や、050番号など一部のIP電話番号、技術的な制約がある場合などが挙げられます。
また、双方向番号ポータビリティを利用する場合、現在契約中の電話サービスを解約することになるため、契約上の縛り期間や違約金がないか確認が必要です。
双方向番号ポータビリティとクラウドPBXの活用

双方向番号ポータビリティの開始によって注目を集めているのが、クラウドPBXサービスの導入です。既存の固定電話番号のまま様々な通信サービスを選べるようになったことで、従来のPBX機器からクラウドPBXへの乗り換えを進める企業が増えてきています。
クラウドPBXとは?
クラウドPBXとは、インターネットを通じてクラウド上にあるPBXの機能を利用できるサービスです。通信コストの削減や電話業務の効率化、リモートワーク環境の構築など、導入には多くのメリットがあります。
クラウドPBXの主な特徴
- 物理的な機器が不要
- PCやスマートフォン、タブレット等を内線端末として使用できる
- 外出先でも会社の電話番号で受発信できる
- リモートワークに対応可能
- 事業規模の変動に柔軟に対応できる
- メンテナンス作業や資産管理が不要
- BCP対策になる
クラウドPBXは、比較的低コストで導入・運用ができることも魅力です。また、サービスを契約するだけで利用を開始できるため、スピーディーに導入できます。
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ロケーションポータビリティの範囲拡大でより柔軟なサービス選択が可能に
この記事では、ロケーションポータビリティの概要や双方向番号ポータビリティとの関連性について解説しました。双方向番号ポータビリティの開始やロケーションポータビリティの範囲拡大によって、柔軟なサービス選択やPBX・CTIのクラウド化がしやすい環境へと移行しています。ぜひこの機会に自社体制やビジネスの見直しを進めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・エビデンス
「番号変更不要」のメリット
本文では「電話番号を継続して利用できる」「移転時の混乱や機会損失を避けられる」とあり、番号維持が重要な価値であることを表現しています。
これは、行動経済学でいう現状維持バイアスを参照としています。
「人は、現状の維持に価値を置き、変更には心理的抵抗やコストを感じる。顧客との接点となる“番号の継続”は、安定性や信頼感の維持に資する」
カーネマン, D.『ファスト&スロー』早川書房, 2012, p.206
番号が変わらないことは、顧客にとって明確な不便の回避と信頼の保持であることを示しています。